第8回-似ているクラスの重複をなくす - Mooで覚えるオブジェクト指向プログラミング

@nqounetです。

「Mooで覚えるオブジェクト指向プログラミング」シリーズの第8回です。

前回の振り返り

前回は、関連するデータを別のクラスに分離し、複数のクラスを連携させる方法を学びました。

第7回-関連するデータを別のクラスに - Mooで覚えるオブジェクト指向プログラミング

クラスが巨大になって管理しづらい…そんな悩みはありませんか？関連するデータを別のクラスに分離し、クラス同士を連携させる設計を学びます。MessageクラスからUserクラスを抽出して、シンプルで拡張しやすい設計を目指しましょう。

nqou.net

MessageクラスからUserクラスを抽出して、user属性でUserオブジェクトを保持する設計にしましたね。

今回は、 似ているクラスのコード重複を解消する方法 を学びます。オブジェクト指向の重要な概念、継承の入門編です。

似たクラスでコードが重複する問題

掲示板を発展させて、「管理者からのお知らせ」機能を追加することになりました。管理者のメッセージには「重要」というラベルを付けたいとします。

通常のMessageクラスとは別に、AdminMessageクラスを作ってみましょう。

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package Message {
    use Moo;
    has content     => (is => 'ro', required => 1);
    has _like_count => (is => 'ro', default => 0);
    has user        => (is => 'ro', required => 1);

    sub show {
        my $self = shift;
        my $author = $self->user->display_name;
        print "[$author] " . $self->content . "\n";
    }

    sub add_like {
        my $self = shift;
        $self->{_like_count}++;
    }
};

package AdminMessage {
    use Moo;
    has content     => (is => 'ro', required => 1);      # 重複！
    has _like_count => (is => 'ro', default => 0);       # 重複！
    has user        => (is => 'ro', required => 1);      # 重複！
    has is_important => (is => 'ro', default => 0);      # 管理者専用

    sub show {                                           # ほぼ重複！
        my $self = shift;
        my $author = $self->user->display_name;
        my $label = $self->is_important ? '【重要】' : '';
        print "$label\[$author] " . $self->content . "\n";
    }

    sub add_like {                                       # 完全に重複！
        my $self = shift;
        $self->{_like_count}++;
    }
};

よく見ると、content、_like_count、user、add_likeがまったく同じです。これはコードの重複であり、問題があります。

同じコードを2箇所に書いているので、修正時に両方を変更する必要がある
片方だけ修正し忘れると、バグになる
クラスが増えるたびに、重複も増えていく

解決策：継承で共通部分を親クラスに

この問題を解決するのが継承です。共通の機能を「親クラス」にまとめ、「子クラス」がそれを受け継ぐ仕組みです。

Mooでは、extendsを使って継承を実現します。

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package User {
    use Moo;
    has name => (is => 'ro', required => 1);

    sub display_name {
        my $self = shift;
        return $self->name;
    }
};

package Message {
    use Moo;
    has content     => (is => 'ro', required => 1);
    has _like_count => (is => 'ro', default => 0);
    has user        => (is => 'ro', required => 1);

    sub show {
        my $self = shift;
        my $author = $self->user->display_name;
        print "[$author] " . $self->content . "\n";
    }

    sub add_like {
        my $self = shift;
        $self->{_like_count}++;
    }
};

package AdminMessage {
    use Moo;
    extends 'Message';  # Messageを継承！

    has is_important => (is => 'ro', default => 0);  # 管理者専用の属性
};

my $user = User->new(name => 'admin');
my $msg = AdminMessage->new(
    content      => 'システムメンテナンスのお知らせ',
    user         => $user,
    is_important => 1,
);

print $msg->content . "\n";  # システムメンテナンスのお知らせ
$msg->show;                  # [admin] システムメンテナンスのお知らせ
$msg->add_like;              # 親クラスのメソッドが使える！

extends 'Message'と書くだけで、AdminMessageクラスはMessageクラスのすべての属性とメソッドを引き継ぎます。

content、_like_count、user属性はMessageから継承
show、add_likeメソッドもMessageから継承
AdminMessageには独自のis_important属性だけを追加

これで、重複コードがなくなりました！Messageクラスを修正すれば、AdminMessageにも自動的に反映されます。

親クラスと子クラスの関係

継承では、元になるクラスを 親クラス （または基底クラス、スーパークラス）、継承するクラスを 子クラス （または派生クラス、サブクラス）と呼びます。

今回の例では、Messageが親クラス、AdminMessageが子クラスです。

子クラスは、親クラスの機能をすべて持った上で、独自の機能を追加できます。これは「AdminMessageは 一種の Messageである」という関係を表しています。

AdminMessageはMessageである（content、userを持ち、showできる）
しかし、AdminMessageには追加でis_importantという属性がある

この「AはBの一種である」（is-a関係）が継承の本質です。

まとめ

extends 'ParentClass'で親クラスを継承できる
子クラスは、親クラスの属性とメソッドをすべて引き継ぐ
子クラスでは独自の属性やメソッドを追加できる
継承により、コードの重複を解消し、保守性が向上する

次回予告

次回は、親クラスのメソッドを子クラスで「上書き」する方法を学びます。AdminMessageのshowメソッドで「【重要】」ラベルを表示するには？ オーバーライド の出番です。お楽しみに。