第9回-同じ名前で違う動作を - Mooで覚えるオブジェクト指向プログラミング

@nqounetです。

「Mooで覚えるオブジェクト指向プログラミング」シリーズの第9回です。

前回の振り返り

前回は、extendsを使った継承を学び、共通のコードを親クラスにまとめる方法を紹介しました。

第8回-似ているクラスの重複をなくす - Mooで覚えるオブジェクト指向プログラミング

通常投稿と管理者投稿で同じコードを何度も書いていませんか？Mooのextendsを使った継承で、共通の機能を親クラスにまとめ、コードの重複を解消する方法を学びます。

nqou.net

MessageクラスからAdminMessageクラスを派生させて、コードの重複を解消しましたね。

今回は、親クラスのメソッドを子クラスで 上書き（オーバーライド） する方法を学びます。

if文で分岐だらけになる問題

前回のAdminMessageクラスには、is_important属性がありました。「重要なお知らせ」には「【重要】」ラベルを付けたいですよね。

安直に実装すると、こうなりがちです。

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sub show {
    my $self = shift;
    my $author = $self->user->display_name;

    if ($self->isa('AdminMessage') && $self->is_important) {
        print "【重要】[$author] " . $self->content . "\n";
    } else {
        print "[$author] " . $self->content . "\n";
    }
}

クラスの種類によってif文で分岐する方法は、一見シンプルに見えます。しかし、クラスが増えるたびに分岐が増え、コードがどんどん複雑になっていきます。

UrgentMessageクラスが増えたら？→ 新しい分岐を追加
NoticeMessageクラスが増えたら？→ また分岐を追加
分岐を追加し忘れたらバグになる

これでは継承のメリットが台無しです。

解決策：親クラスにformat()メソッドを定義

if文での分岐を避けるために、「メッセージをフォーマットする」という責務を専用のメソッドに切り出しましょう。

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package User {
    use Moo;
    has name => (is => 'ro', required => 1);

    sub display_name {
        my $self = shift;
        return $self->name;
    }
};

package Message {
    use Moo;
    has content     => (is => 'ro', required => 1);
    has _like_count => (is => 'ro', default => 0);
    has user        => (is => 'ro', required => 1);

    sub format {
        my $self = shift;
        my $author = $self->user->display_name;
        return "[$author] " . $self->content;
    }

    sub show {
        my $self = shift;
        print $self->format . "\n";
    }
};

my $user = User->new(name => 'nqounet');
my $msg = Message->new(content => 'こんにちは！', user => $user);

$msg->show;  # [nqounet] こんにちは！

formatメソッドは「表示用の文字列を作る」役割だけを担います。showメソッドはformatの結果を画面に出力するだけです。

この分離がオーバーライドの伏線になります。

解決策：子クラスでformat()を上書き

子クラスで同じ名前のメソッドを定義すると、親クラスのメソッドを 上書き（オーバーライド） できます。

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package User {
    use Moo;
    has name => (is => 'ro', required => 1);

    sub display_name {
        my $self = shift;
        return $self->name;
    }
};

package Message {
    use Moo;
    has content     => (is => 'ro', required => 1);
    has _like_count => (is => 'ro', default => 0);
    has user        => (is => 'ro', required => 1);

    sub format {
        my $self = shift;
        my $author = $self->user->display_name;
        return "[$author] " . $self->content;
    }

    sub show {
        my $self = shift;
        print $self->format . "\n";
    }
};

package AdminMessage {
    use Moo;
    extends 'Message';

    has is_important => (is => 'ro', default => 0);

    sub format {  # 親クラスのformat()を上書き！
        my $self = shift;
        my $author = $self->user->display_name;
        my $label = $self->is_important ? '【重要】' : '';
        return "$label\[$author] " . $self->content;
    }
};

my $user = User->new(name => 'admin');

my $normal = Message->new(content => '通常の投稿', user => $user);
$normal->show;  # [admin] 通常の投稿

my $important = AdminMessage->new(
    content      => 'システムメンテナンスのお知らせ',
    user         => $user,
    is_important => 1,
);
$important->show;  # 【重要】[admin] システムメンテナンスのお知らせ

AdminMessageクラスでformatメソッドを再定義しています。これがオーバーライドです。

$important->showを呼び出すと、内部で$self->formatが実行されます。この時、$selfはAdminMessageオブジェクトなので、AdminMessageのformatメソッドが呼ばれます。

ポイントは、showメソッドには手を加えていないことです。親クラスのMessageに定義されたshowがそのまま使われていますが、formatだけが子クラスの実装に差し替わっています。

これがオーバーライドの力です。if文の分岐は一切ありません。新しいクラスを追加しても、そのクラスでformatを定義するだけで済みます。

まとめ

子クラスで同じ名前のメソッドを定義すると、親クラスのメソッドを上書きできる
この上書きを オーバーライド と呼ぶ
if文でクラスの種類を判定して分岐するのは避ける
共通の呼び出し元（show）から上書きされたメソッド（format）を呼ぶ設計がスッキリする

次回予告

次回は、継承とは違う形で振る舞いを共有する方法を学びます。MessageもUserも「作成日時を持つ」という共通の機能を持たせたいとき、どうすればいいでしょうか？ ロール の出番です。お楽しみに。